■時空ロマン 世界遺産ミステリード 2011年4月1日(テレビ東京)
【紹介された巨石&遺跡】 聖ヨハネ大聖堂地下通路(マルタ・ヴァレッタ) スコルバ神殿(マルタ) ハジャーイム神殿(マルタ) アールダラム洞窟(マルタ) タルシーン神殿(マルタ) カートラッツ(マルタ) ジュガンティーヤ神殿(マルタ) サンマルコ寺院(イタリア・ヴェネチア) スーリヤ寺院(インド・コナラク) チチェンイツァ遺跡(メキシコ)
★へっぽこ絵 フィリポ2世の紋章。 この紋章が刻まれた石板がサンマルコ寺院の地下から発掘された。
■地味なキャスト、地味な台本なのに、紹介されたミステリーはなかなか秀逸でした。 中でもヴェネチアのサンマルコ寺院に埋葬されているのは、聖マルコではなく『アレキサンダー大王』というのは始めて聞いたので、とても興味深かったです。
今回のナビゲータは伊藤淳史さんと真木よう子さんでしたが、大人しい二人に相応しく、番組のテンションもやや低めでした。 まぁミステリーとタイトルについているから旅番組風に浮かれ調子にやるのはやめようと思ったのかもしれませんが、私としてはもうちょっと楽しい雰囲気があっても良かったんじゃないかと思いました。
しかし要所要所で登場させる現地案内人は個性的で楽しい人が多く、自説を誇らしげに語ってくれるところは遺跡マニアとしては見ていて楽しかったです。 現地でどんな人に話を聞くのか、登場してもらうのか…その人選も番組成功の鍵だなと思います。 個人的にはマルタ島のカートラッツを海中で発見したダイバーさんがイケメンで嬉しかったです。
◆マルタはアトランティスだった!?
「マルタ島がアトランティスであるわけがない!ヽ(`Д´#)ノ 」と思っている私は、どんな説を出されても、ただちに反論して見せるぞ! …という気構えで番組を見ましたが、そんなに構えなくても根拠となる説は説得力を持っていませんでした。 そもそもプラトンが書いたアトランティスは水路が張り巡らされた都市として紹介していましたが、残念ながらマルタ島には池も湖もないし、雨もたいして降らないし、むしろ住民は始終飲み水の心配をしているのだから、あんな水の豊かな都市が造れるわけがないです。 聖ヨハネ大聖堂の地下にオリハルコンが隠されているのかも…ということで伊藤さんが地下にもぐりましたが、あれも雨水を貯めるための貯水池じゃないかと思います。 以前、どこかの番組で似たような施設を見た記憶があるし…。 ただあの奥行きと高さは驚きました。 さすが兵糧攻めにあっても屈せず、アラブを破っただけのことはあります。
というわけで、「カートラッツ」が水路という説もどうなのかな…と思います。 私がマルタ島を訪れた際に読んだ本には「車輪の跡」と書いてあり、実際、馬車のわだちに似ているなと私も写真を見て思いました。(残念ながら実物は見ていません)
ハジャーム神殿に巨大な屋根がついてました。 あれは遺跡の景観を残念ながら破壊しますね…。 保護のためなのは分かりますが、遺跡が影に入ってしまうことと、空が見えないことがとても残念です。 また屋根の下にあると、巨石が小さく見えてしまうなと思いました。
◆インドの寺院に刻まれた未来を予言した暗号とは!?
スーリヤ寺院の巨大な車輪は面白いですね。 破壊神カルキと超新星を結びつける発想も良く出来ていました。 2012年に滅亡が来るのではなく、2020年だという説…本当はどうなんでしょうね。
◆アレキサンダー大王の遺体がヴェネツィアに!?
今回、一番面白かったのは、このテーマです。 サンマルコ寺院に眠っているのは聖マルコではなく、アレキサンダー大王の遺体だというのですから、かなりショッキングです。 その根拠が1962年に寺院の地下から発見された石板に彫られた紋章と、寺院の壁に彫られた「グリフォンを従える戦車に乗った大王」の図。 この二つをもって、ここに埋葬されているのはアレキサンダー大王だと主張するのですが、やはりもう一歩という感じがしました。
そもそもエジプトで手に入れたという遺体が怪しいです。 「聖マルコ」というふれこみですが、現在の遺体の形状と文献に残されている姿と、ちょっと違うというのがダメですね。 文献では頭と胴を切り離され火葬して灰にしたそうなので、聖マルコの遺体があったとしても、それは人の形をしていないと思います。 それなのに、遺体を調べたら頭蓋骨があったというのですから、明らかに持ち帰った遺体はニセモノとしか言えません。
そしてその遺体がアレキサンダー大王だということですが、証拠としてあげられた石板に彫られた紋章は確かにフィリポス2世が使っていた紋章です。 まぁだからといって、遺体がアレキサンダー大王と決めつけるのは早いと思います。 私はブルガリアのスベシュタリ遺跡で、墓の主がアレキサンダー大王と仲良く並ぶ絵を見たことがあります。 もちろん主とアレキサンダー大王は血もつながっていないし、上司と部下の関係でもありません。 偉大なアレキサンダー大王を描くことで、墓に箔を付けたり、またアレキサンダー大王の威光や永遠性にあやかろうとしたようです。 アレキサンダー大王には不死のイメージがあるので、死んでもまた生まれ変わりたいという想いが、大王と結びついているようです。 ヴェネチアとアレキサンダー大王は時間も空間も離れていますが、ヴェネチア人のオジサンが言っていたように、たとえばフン族から逃げてきた人たちの間にアレキサンダー大王に敬服する人がいて、その人たちが聖マルコの遺体に神聖を補わせるために大王の紋章の石板を付け足した…とも考えられます。 アレキサンダー大王マニアとしては、こういうミステリーはとても面白いです。 もっと特集を組んで、どんどん放送して欲しいです。
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