■ ゲームマスター  ・インタビュー



    これはジャンプに掲載されたインタビューですが、高橋先生が遊戯王を描く前に何をしていたのかなど、かなりファンとしても気になる質問がされています。


    米版ジャンプ:2003年2月号より引用
    資料提供:マアト様/日本語翻訳:ピグモん様




      【インタビュー】

      ゲームマスター  遊戯王の作者、高橋和希先生へのインタビュー

      何百人ものキャラクターと何千ものモンスターたち。

      遊戯王現象は、高橋和希という一人の人物のイマジネーションと、カラフルでスタイリッシュな絵から始まった。

      高橋先生は1982年に漫画界にデビューをしたが、成功を収めるのは1996年の週刊少年ジャンプにおける遊戯王の連載開始を待たねばならなかった。
      そして、「マジック&ウィザーズ」の最初のモンスター、ブルーアイズホワイトドラゴンが登場したのをきっかけに、ゲーム漫画は実際のカードゲームへと変貌を遂げ、友情と闘いという典型的少年漫画のテーマに全く新たな次元を与えることとなった。


      遊戯の中に存在するもう一つの人格の秘密、ゲームの王になる能力とは何だろう?
      高橋先生は言う。
        『もう一人の自分』 というのは誰の中にもいると、私は思っています。
        それは、理想の自分です。
        しかし、親や世間が期待をかけ過ぎると、人は理想の自分の重みに耐え切れなくなり、自分自身を見失ってしまうのです。
      高橋先生は自分を見失うことがなかった。
      その結果、「遊戯王」が誕生したのだ。





      【パート1:プロフィール】

      本誌:先生の若い頃はどんな感じだったんですか?(例えば、中学や高校の頃)

      高橋:中学では、テニスのクラブ活動に一生懸命で、漫画は趣味として描いていました。
      勉強は好きじゃなかったので、教科書によく落書きしていました。
      コンビニや喫茶店でバイトもしていました。


      本誌:絵を描き始めたのは何歳の頃ですか?  どんな絵を描いていたんですか?

      高橋:幼稚園の頃、テレビのアニメ番組に出てくるロボットをよく描いていました。
      ボクの絵は、友達にも結構受けていましたよ。


      本誌:先生の絵に影響を与えたものは何だと思いますか?

      高橋:小学校の頃はウルトラマンが好きだったので、モンスターのデザイナーになりたいと思っていました。
      今の絵のスタイルに落ち着くまでに、コミカル風、劇画風、アニメ風といろいろ試しましたが、それらすべてに影響を受けています。
      最終的には、すべてのスタイルを集大成して、遊戯王が生まれたと思っています。


      本誌:漫画は1982年から描いていたそうですが、遊戯王以前の漫画はどんなものだったんですか?

      高橋:野球やプロレスなどを扱った漫画です。
      多くは「闘い」をテーマにしたものでした。


      本誌:遊戯王を描く前は、ゲーム会社にいましたね。
      この時期のことについてお聞きしたいんですが、どんなお仕事をしていたんですか?

      高橋:スロットマシーンのパネルのデザイナーをしていました。


      本誌:どのようにフルタイムのプロの漫画家になり、遊戯王を描き始めたのですか?

      高橋:はじめは、他の漫画家の先生のアシスタントをしている時に、いくつかの出版社に作品を見せに行きました。
      そんな時、週刊少年ジャンプのある編集者が、良い評価をしてくれ、ボクに漫画を描く機会を与えてくれたんです。
      それが遊戯王の誕生へとつながっていきました。


      本誌:絵を描く時の画材は、何を使っていますか?

      高橋:ペン入れにはGペンを使っています。
      紙は普通の店で買っています。
      彩色には、水彩とマーカーを使っています。


      本誌:後にキャラクターたちが腕に装着するデュエルディスクはかっこいいですね。 実在するんですか?

      高橋:実在はしません。誰か作って下さいよ。





      【パート2:ゲームと関心】

      本誌:どうして遊戯王に、エジプトという要素を取り入れたんですか?

      高橋:はじめに、ゲームをテーマにしようとしていた時、現代のほとんどのゲームは古代エジプトに端を発しているということを知りました。
      それで、エジプト神話の要素を取り入れて、話を面白くしようと考えたんです。

      本誌:世界ではどこを旅行したことがありますか?

      高橋:遊戯王を描く前に、エジプトに行きました。
      その他には、ロサンジェルス、ラスベガス、フロリダのディズニーワールドに行ったことがあります。

      本誌:「闇」とか「魔術」は、遊戯王に繰り返し登場するテーマですね。
      恐いものとか、オカルトに個人的に興味があるのですか?

      高橋:説明のつかない現象についての未解決の謎にはひきつけられますよ。
      でも現実には、「恐れ」というのは人間の心が生み出すものだと思っています。


      本誌:古代の魔法のパズルが登場する「ヘルレイザー」という映画を見たことはありますか?

      高橋:とても好きな映画です。
      ボクの漫画で、パズルが別の世界とつながっているという部分は、この映画に影響を受けているのかもしれません。


      本誌:アメリカのコミックに興味があるそうですが、特に好きな作家や作品はありますか?
      先生は絵のスタイルに関心があるのですか、それとも、スーパーヒーローものの定番である「正義」とか「弱者による逆襲」といったテーマに関心があるのですか?

      高橋:作家ではサイモン・ビズリーが好きです。
      それから、映画『スパイダーマン』は大変良くできた映画だと思います。
      正義を求めつつ、自分の人間性を失わないことは、現代のヒーローの条件なんじゃないでしょうか。


      本誌:ボードゲームや昔ながらのゲームで好きなものをあげて下さい。

      高橋:将棋(チェスの日本版:編集者)、麻雀、トランプが好きです。


      本誌:遊戯王に出てこないゲームとして、オンラインゲームがありますね。何か理由があるのですか?
      先生にとっては、向かいあってゲームすることが大切なのでしょうか?

      高橋:ゲームというのは、基本的に、人間と人間が向かい合ってするものです。
      相手の表情を見て、心理的な作戦を練るのが、面白いのです。
      私は個人的には、オンラインゲームにも興味を持っています。
      でも、私の作品に登場することはないでしょう。
      オンラインゲームは、バーチャル世界がモニターに映し出されただけのものであり、主人公が見る実際の世界ではないですからね。


      本誌:作者コメントの1つに、テーブルトークRPGをプレーすると書いてありましたが、これは遊戯王の「モンスターワールド」にも登場しますね。
      RPGについての先生の経験はどんなものですか?
      プレーヤーとゲームマスターとどちらになるのが好きですか?

      高橋:ボクは、ダンジョンズ&マスターズにプレーヤーとして参加したことがあります。
      正直言うと、ボクは自分でシナリオを書いて、ダンジョンマスターになりたかったんですが、その時間がありませんでした。
      そうした気持ちが漫画として現れたのかもしれないですね。





      【パート3:遊戯王のすべて】

      本誌:遊戯王の連載を始めたとき、何をテーマにしようと思っていましたか?

      高橋:友情です。人間同士の絆です。


      本誌:カードゲーム、あるいはどれか一つのゲームを中心とした漫画にしようと考えていましたか?

      高橋:ゲームをメインテーマにした「闘い」の漫画を描こうとは思っていましたが、カードゲームが中心になるなんて、思ってもいませんでした。
      カードの話は、一回きりで終わりになるはずだったんですが、読者からの反響が凄くて、そのアイデアを広げていったんです。


      本誌:漫画中のカードゲームを実際のカードゲームにするのは、難しかったですか?

      高橋:漫画では、ルールは、物語の目的上シンプルにする必要があります。
      漫画で表現しなければならないのは、カードゲームではなくて、それをプレーするキャラクターの方ですからね。


      本誌:漫画中のカードゲームは、実際にカードゲームが存在するようになって、影響を受けましたか?

      高橋:それほど変わったとは思いません。
      大切なのは、カードがキャラクターに相応しいかどうかということです。
      カードは、キャラクターの人格、思考過程、戦略を表すものとなっているんです。


      本誌:遊戯という名前 [日本語では「ゲーム」または「遊ぶ」という意味:編集者] 以外に、主要キャラクターの名前に何か意味はありますか?

      高橋:城之内の名前の第一音節「Jo」は、Yu-Jo = 友情(日本語でフレンドシップを表す言葉:編集者)から来ています。
      海馬の姓*、「瀬人」は、古代エジプトのセト神に由来しています。
      (*先生の言い間違いか、編集者の勘違いと思われる:訳者)


      本誌:遊戯には「変身 (henshin)」能力がありますが、二人の遊戯は表情と人格以外は同じに見えます。
      もう一人の遊戯の姿を、遊戯とはもっと異なる風に描くことは、考えなかったのですか?

      高橋:そんなことは考えたことがありません。
      遊戯の中に2つの人格が存在するのであって、実際に変身するわけではありませんから。


      本誌:遊戯王には、印象深い悪役が多く登場します。お気に入りの悪役は誰ですか。
      悪役を描くときに最も大切なことはなんですか。

      高橋:ボクは海馬が好きですね。あとは、バンデット・キースかな。
      悪役を描くときに大切なのは、人間らしさも多少含めて、完全に邪悪なキャラクターにしてしまわないことです。
      「悪」というのは他人が判断することであって、その本人にしてみたら、「悪」は「善」なのですから。


      本誌:遊戯のヘアスタイルはどこからアイデアを得たのですか?

      高橋:まずヘアスタイルは大変オリジナルなもの、そしてインパクトのあるものにしようと思っていました。
      人が生まれて目が見えるようになった時、最初に目で見て記憶するのは、自分の掌(てのひら)の形なんだそうです。
      遊戯のヘアスタイルは、5本指を広げた掌がもとになっているんです。


      本誌:獏良の性格はどのようなものだと考えていますか? 
      極端な二重人格のために、最も複雑なキャラクターの1人と思われますが。

      高橋:獏良には、千年リングを通して「邪悪なもの」が宿っています。
      闇バクラは、闇の力を得るためにすべての千年アイテムを集めようとしています。このために、人殺しもしかねません。
      闇バクラは、遊戯の最も手強い敵となるかもしれませんね。


      本誌:海馬の性格はどのようなものだとお考えなのですか?
      どのようにして、「悪役」から「ライバル」に変貌を遂げたのでしょうか?

      高橋:海馬は、両親の愛を受け損ねたために、心に空洞があるのです。
      自己愛を育むため、そしてその空洞を埋めるために、海馬は勝者であろうとしていました。
      それが、他人を傷つけることを意味したとしてもね。
      でも遊戯に出合ったことにより、海馬は戦士 (warrior)となり、戦うものとして成長する機会を得たのです。


      本誌:遊戯王で最も印象深いものの一つに、想像力に富んだ不思議なモンスターたちがあります。
      モンスターをデザインするときに気をつけているのはどんなことですか?

      高橋:登場人物の魂に形を与えるつもりで、モンスターをデザインしています。
      私は、心、つまり魂とか人間内部の本質にも形があると思っているんです。

      本誌:いくつぐらいのモンスターをデザインしましたか?

      高橋:数えたことはないんですよ。
      でも、漫画の作品中に出てくるモンスターは、すべてボクがデザインしましたよ。


      本誌:最後に、アメリカのファンに何かメッセージはありますか?

      高橋:まず、アメリカで多くの人がこの作品を支持してくれて大変誇りに思っています。
      遊戯王のテーマは人間同士の絆ですから、皆さんがカードやゲームを通して友達を一人でも増やすことができたら、ボクは嬉しいです。
      アメリカン・コミックの作家たちにも負けないように頑張りたいと思いますので、どうぞよろしく。




      【所感】
      高橋先生が漫画家になる前の事、エジプトに行った話などファンとして気になる事をズバリと聞いてくれたインタビューアーに感謝の言葉を!

      お気に入りの悪役としてキースの名前をあげてくれたのが嬉しかったです。

      表くんが王様に変わることを『変身能力』と言っていたのには大笑いです。
      高橋先生もこの質問は予想外だったみたいですね。
      まぁ…米アニメで「ユギオぉぉぉ〜♪」と叫びながら交代していたら、「変身している」と思われても仕方ないですね。



和希の素・語録