■ 高橋和希の世界を覗く | ・インタビュー |
これはタイム誌に掲載された独占インタビューです。 聞き手:リサ・タケウチ・カレン TIME:2001年6月4より引用日 資料提供&日本語翻訳:ピグモん様 |
【インタビュー】 ボクはゲーム狂 遊戯王の生みの親、高橋和希の世界を覗く 高橋和希氏の名はよく知られている。 漫画『遊戯王』をもとにしたゲームは、ポケモンに代わって、今や日本ナンバー1の人気の座を獲得したが、近く世界を席捲するだろうと言われるこのブームの火付け役となったのが、高橋和希氏だ。 高橋氏の漫画をもとに、大ヒットのカードゲーム、ゲームボーイやプレイステーションのビデオゲーム、テレビアニメが生み出されてきた。 ところが、トンガリ頭のヒーロー「遊戯」が筆箱やTシャツ、その他無数の小物のデザインとして登場する一方で、この遊戯の生みの親は謎に包まれたままだ。 高橋氏 (39歳) が報道機関にコメントを発表することは皆無で、ファンでも氏の名前以外に知っていることはほぼ無きに等しい。 写真すら公表されておらず、街を歩いても全く気付かれることはない。 この秋、アメリカで予定されているアニメの放映開始、カードゲームの発売を機に、タイム誌は東京郊外にある高橋氏の仕事場を覗く許可を得ることができた。 由緒ある豪邸が建ち並ぶ地区の一画にあるアパートで、高橋氏と5人のスタッフ(すべて若い男性)が少年ジャンプに掲載する19ページを毎週描きあげていく。 少年ジャンプは、『遊戯王』(「ゲームの王」という意味)が1996年から掲載されている漫画の週刊誌である。 仕事場は、CDラックや、ウォレスとグルミット、ポケモン、そしてもちろん遊戯王などの子供向け番組の玩具であふれかえっている。 以下は、爆発的ヒットのクリエーター、高橋和希氏との本誌の独占インタビュー(氏にとっては2度目のインタビュー)である。 本誌:漫画を描き始めたきっかけは? 高橋:子供の頃から絵を描くのが好きでした。 でも漫画という形に仕上げたのは高校に入ってからです。 初めて作品を発表したのは20年前で、ある高校についてのコメディー漫画だったんですが、全くの失敗作でした。 その後、プロレス漫画を描いたのですが、これもまた失敗で、今はあまり思い出したくもないですね。 本誌:遊戯王のアイデアはどこから来たのでしょうか? 高橋:ボクはいつでもゲーム狂だったんです。 子供の頃はもちろん、今でも、ブラックジャックや、スコットランドヤードなどのボードゲームが好きです。 ゲームの中では、プレーヤーはヒーローになれる。 それが遊戯王の基本前提ですね。 主人公の遊戯は弱くて子供っぽい男の子だけれど、ゲームをする時にはヒーローになれるんです。 本誌:初期のストーリーでは、遊戯は玩具や小道具を使ったりして、様々なゲームをしています。 でも漫画が波に乗り始めたのはカードゲームを導入してからでしたね。 高橋:その通りです。 もともと、あのカードゲームは2話でおしまいにするつもりでした。 でも、読者の反響が物凄かったんです。 少年ジャンプにはゲームについて、『どうやって遊ぶのか?』、『どこでカードが買えるのか?』といった質問がどんどん寄せられるようになりました。 あの当時、子供たちはビデオゲームに夢中でしたから、カードゲームをする子供はほとんどいませんでした。 でも、機械を相手に戦うより、人間相手に目を見て戦う方がずっとワクワクする。 ボクはそこに手ごたえを感じて、カードゲームに集中することにしたのです。 本誌:それぞれ独自の長所や弱点を持ったカードのモンスターを生み出すのは大変なことですか? 700体くらいのモンスターをデザインされたと伺いましたが。 高橋:もう数えるのはやめましたが、1,000体ぐらいだと思います。 そうですね、大変ですよ。 あとどのくらいボクの中に在庫が残っているのか、ちょっとわかりません。 でも男の子は誰でもモンスターが好きだし、ボクも例外ではないので、モンスターのデザインは楽しいです。 カードを使う人物の性格に合ったモンスターをデザインすることを心がけています。 例えば、遊戯の敵である海馬は意地悪く冷酷な性格ですから、海馬のカードもそういう傾向になります。 本誌:好きなモンスターはどれですか? 高橋:ブルーアイズホワイトドラゴン。 これは一番初めに登場させたカードですから、特別な思い入れがあります。 本誌:『遊戯王』は、第二の『ポケモン』と言われています。 これほどまでに大ヒットしたのは、なぜでしょう? 高橋:カードゲームというのは、一人では遊べません。 友達と一緒に遊ぶ必要があります。 「遊戯王カードで遊ぼう」と一人がもう一人に声をかけることで、広がっていくんです。 漫画の方について言うと、誰でも子供は変身 − つまり何か別のもの、別の人間になる能力 − を夢見ていると思います。 遊戯が無敵のゲームの達人に変身することは、子供にとって大きな魅力でしょう。 それから、ゲームやカードのキャラクターを取り巻く神秘性も、子供は好きなんじゃないでしょうか。 本誌:アメリカ人は遊戯王をどう受け入れると思いますか? 高橋:話は、ありふれた日本の高校生を主人公にしたものですから、アメリカの子供たちがそれを全部理解できるかどうかはわかりません。 でもぜひ知ってもらいたいのは、遊戯の「ゆう」、城之内の「じょう」をくっつけると「友情」という言葉になるということです。 「友情」というのは、英語ではFriendshipだけれど、実際はもっとパワフルなものなんです。 アメリカの子供たちが、この話の登場人物の間に強い友情を感じてくれたら、嬉しいですね。 |
【所感】 |
冷静に遊戯王ブームを分析し、淡々と語る先生が素敵です。 |