MAYA Kingdom of Mystery
神秘の王朝-マヤ文明展
国立科学博物館で開催 2003年3月18日~5月18日まで
▼マヤ遺跡といえば「メキシコ・グァテマラ」ですが、今回はホンジュラスの国立人類学歴史学研究所研究員である『中村誠一先生』が中心となって、「今までとはひと味違うマヤ展」を開催していました。
▼副題には「神秘の王朝」とありますが、展示の中心は「マヤ文明の実像に迫る」という意図がはっきりと打ち出されていて、とても小気味よい展示会になっています。
▼辛い点をつける私ですが、今回は文句無しに「星3つ★★★」でした。
■ちらしより:
マヤ文字は解読され、謎だらけだったマヤ文明の全貌が、今、明らかになりつつあります。
チラシを読むと、現在、マヤ文字の8割が解読済みだそうです…いつの間に…。
今まで分からなかった王の名前もみんな解読されていて、いろんな意味で新鮮な驚きに満ちた展示会でした。
★入口からしてステキ
入口の演出がすごく凝ってました。
白黒の遺跡写真の前に、樹木をプリントしたオブジェを立たせ、入口から展示室までの通路をあたかもジャングルのように演出しているのです。
その遊び心に感嘆しましたね。
突き当たりで私達を待つタイトルパネルも泣かせるデザインとなってます。
エントランス部分をちょっと遊ぶだけでも、訪れる人にとっては展示への感心が増すものです。
ついでを言えば、鳥のさえずりやホエ猿の声も効果的に使うと、さらに良かったんじゃないかと思いました。
主催のご挨拶
従来の謎とロマンのマヤ文明像ではなく、新しく解明されたマヤ文明像をお見せいたします。
「マヤ文明発見の旅をお楽しみいただければ幸いです」
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第一部 よみがえるマヤ王朝
■ホールを円形にして、床に6大文明の世界地図を配置。
壁に貼られたパネルの一つ一つが古色然とした色、デザインになっていてとてもステキでした。
★ 見所
○マチュキラ石碑3号-石灰岩(815年)
最初に遭遇するマヤの石碑! かなりのインパクトがありました。
他の人も「ほえぇぇ~」と、驚きの声を上げてましたね。
そして今回、石碑に彫られたマヤ文字が読めるようにと丁寧な解説パネルも掲示されているので、私のような初心者でも「フムフム」と、石碑に何が書いてあるのか分かるようになってます。
ある意味、すごいことですよねぇ。これって…。
「ただ見るだけではなく、一緒に謎を解きましょう」という主催者の気持ちも伝わります。
◆貴族の日常
★ ここでは貴族が普段使う道具などが展示されていました。
■ちょっとすごかった品物
★右図の「カカオの神」--全身にぼつぼつとカカオが…。鳥肌ですよぉ
★No.26-カカオ用の多彩色の円形型壺--容器上部にわざわざ『カカオ用』と書いてあるんだって。
当時は専用容器で飲むほど、貴重品だったんですねぇ。
◆美と知識の想像と体現
★ ここでは当時の書記が芸術、文化の先頭を走っていたという検証をやってました。
■ちょっと気になった品物
★樹脂の残骸が残っていたという大壺-『コパル』という樹脂の残骸が残っていたそうです。
エジプトのミイラに使われていた香料を調べる関係で、最近、香りに興味を持っているので、マヤの「コパル」という樹脂の存在がメチャクチャ気になります。
コパル
メキシコ産の針葉樹の樹脂。琥珀に似ているそうです。
色は白っぽい感じ。これを香として焚いたりしたそうです。
★No.52ピエドラス・ネグラスのパネル--石器で彫られたわりには線がするどいです。
少し離れたトコロにあるガラスケースの中に、彫刻用の石斧も展示してあるので、忘れずに見ておいてくださいね。
「こんな道具しかないのにあれだけのモノを…」と、感心することができます。
★蓋つきヒスイ容器の展示台がさりげにピラミッド形になっていました。
どうも良品を展示する時にこの台座を使用しているみたいです。
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◆劇場的世界
★ 芝居がかったマヤの人々…王様や貴族、一般市民にまで広がる、その役者魂をさりげなく紹介。
■ちょっと気になった品物
★ユーゴという名のプロテクター--マヤ式ボールゲームの際に着用したと言われている、見た目にも重そうな石のプロテクター。
解説板にも「非ぃ実用的」と書いてありました。
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第二部 コパン王朝興亡史
■ここではマヤ文字解読から見えてきた、コパン王朝の栄枯盛衰を詳しく解説しています。
このコーナーを見終わった後、あなたのマヤ観も変わるでしょう。
★ 見所
○「祭壇Q」のレプリカ-グラスファイバー製
実物から型を取ったレプリカなので、もう素材が違うだけで99%はオリジナルと同等です。
細かい彫りの具合までバッチリ観察できます。
■ちょっと気になった品物
★No.72の絵文字様式の彩色壺--墨絵の感じが鳥獣戯画のような絵壺。迷いのない線がまた魅力的。正面より向かって右の方がダイナミックでよろしい。
★謎のゴムボール--第一展示室出口付近に球技で使ったゴムボールのレプリカがおいてある。
ウーレ(hule)という木の樹脂を固めて作ったものだそうです。
みかけは焼けこげの『たこやき』みたいですがよく弾みます。
★ ◆コパン王朝の成立と拡大
★ 見かけはひとつのピラミッド…だがそれはロシアのマトリョーシカのように幾層もの墳墓が埋められた、魔の聖域だった!!
■西暦426年 ガシュ・クック・モがコパン王朝を創始。
ピラミッドの最深部はフナル王朝のモノ?とマルガリータ神殿が中心。
マルガリータからは「赤い王妃」が発掘されました。
★ ■10J-45「王墓の謎」-コパンのメイン遺跡からちょっと離れている
アクロポリス外で見つかった初めての王墓です。
王位継承者のみが持つことを許されるというゴザ編みのヒスイ製品が出土しました。
■このコーナーではマヤ人たちが生み出した、奇妙キテレツな想像の産物を見ることができます。
鼻のもったりした神官像しか知らない人にとっては、まさに驚異の世界となるはずです。
★ ■ちょっと気になった品物
★怪物型の香炉--もう見た目がスゴイ印象的です。どうしてこんなモノを造ったのかと、小一時間問いつめたいですね。
★王の姿をかたどった土偶たち--チョルチャ王墓の出土物。香炉の蓋に作られた王たちの姿・形がとてもユニーク。一体、一体をよく観察すると「ふんどし」の形が微妙に違う…(^_^;)。
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◆内乱と衰退
■18ウサギ王がキリグア王に首を狩られてからコパン王朝は衰退していったそうです。
キリグア遺跡とコパン遺跡って距離がとても近いんですよね。
そんなご近所王朝がなぜ、仲違いをするようになったんでしょうね…。
■ちょっと気になった品物
★変形された骸骨-歯にヒスイが象眼された骸骨。マヤ人と言ったら、この「変形頭」ですが、今回の展示ではあまり重要視されてませんでした。もう2、3個は見たかったです。
◆コパン王朝の崩壊
古典期マヤ文明の崩壊に関する仮説
▼有力なのは
都市間の戦争
貴族の反乱
生態系の破壊-これについては栄養失調の人骨が見つかったそうです。
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◆バーチャルリアリティシアター
形は映画鑑賞と同じです。客席とスクリーンが用意されています。
違うのは民族衣装を着たお姉さんが、西暦802年のコパンへ私達を誘ってくれるというアトラクションになっていることです。
『仮想考古学』という新しい手法といえますね。
廃墟や遺物ばかりの展示と違い、遺跡にも人が住み、太陽はめぐり、音や匂いが溢れていた…そんなイメージをお客さんに持ってもらうには最適の方法です。オモシロイ技術が育ってきているのですねぇ~。
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◆お土産チェック
バーチャルシアター前の空間を利用してお土産屋がマヤ関連のグッズを販売していました。
いつもの「クリアーホルダー」や「しおり」などのレアアイテムはありませんが、なかなか素敵なモノが並んでいて、買っていく人も多かったですね。
★ グァテマラ観光局が美麗なパンフレット配布していました。
★ マヤ文字のセンスの良いTシャツはステキでした。これからの季節にはちょうどイイですね。
★ 『文明展オリジナル』と銘打ったマヤ土器のチョコレートセット! 味見したかった(^_^;)