【21世紀の大発見】
よみがえる黄金文明展-ブルガリアに眠る古代トラキアの秘宝-
大丸ミュージアム 2009年1月29日~2月15日

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★祝・ブルガリアの黄金展!
去年、ブルガリアを訪問し、現地で見てきたばかりの逸品たちと、こんなに早く再会できるとは思わなかったので、運命を感じながら堪能しました。
日本で久しぶりに開催されたトラキア展なので、平日にも関わらず多くの人が訪れていました。
トラキア人の墳墓を尋ねてから、すっかりオルフェウス教(ディオニュソス教とも言われる)にハマってしまっているので、今回の展示はとても楽しみにしていました。
■展示等
ここではボールペンの使用はダメということで、エンピツを貸してもらったのですが、なんと「4B」。
芯がやわらかくて、メモ帳に書いた文字がどんどん太くなっていくのにはまいりました。
(すいません、借りといて文句言ったりして…)
解説板が分かりやすく、字も見やすくて、とても好印象でした。
遺物の前に置いてあると混雑した場合は見難いかと思いますが、大きな会場じゃないのでこれでちょうど良いかと思いました。
遺跡の地図や写真が少なかったのは残念でした。
土地勘のないお客さんに対して配慮して欲しかったです。
入り口近くの年表のわかりやすさは神レベル! とっても参考になりました。
■入り口
なーんと、入り口で、シュベスタリ古墳の女神たちのレリーフがお出迎えしてくれていて、ドキドキでした。
解説も何もないので、一般客はほとんど「????」状態でしたが、中には熱心に見ていく人もいました。
女神と女神の間には柱を立て、その上で小さな篝火を燃やす…というこだわりの演出に私などは大喜びだったのですが、それに気がつく人が少なかったのは残念でした。
(実際はそんな火を焚く場所はないけど(写真参照))
■1.文明の十字路
入り口すぐに可愛い土器が展示されていました。
三本足の黒陶土器。
火葬した骨を入れて岩窟墓に納めたらしいです。
周囲の「△▽△▽△▽」模様が可愛いです。
■「世界最古の黄金文明」なのだそうですよ。
黒海沿岸のヴァルナ集団墓地では紀元前5000年頃の黄金製品が出土していて、これらはエジプトやメソポタミアよりも古いんだそうです。
私はヴァルナは夜について早朝バスで立ってしまったので博物館は見ていないのですが、ネセバル博物館で見た写真のイメージからすると、かなり大規模な墳墓があの辺りにはあったようでした。
この雄牛のアップリケも古いものですが、簡素ながら可愛らしさが残るデザインを見ると、こういうセンスは今と変わらないことがビックリです。
■№21の松かさ形のリュウトン(前4)や№23のカンタロス杯(前4-前3頃)はディオニュソス教を彷彿とさせるもので、とても興味深いものでした。
他にもディオニュソス祭の様子を描いた赤絵ツボなどもあって、当時の信仰の盛り上がりを感じられました。
面白かったのは「仮面付き兜」です。
フルフェイスタイプなのですが、その顔が個性的というかなんというか。
タレ目のアーモンドアイが魅惑的でした。
■個人的目玉は馬飾りです。
馬飾りに描かれた、「オルフェイス教」の様子です。
紀元前4世紀のモノですが、呪術的な要素も濃くていろんな意味を感じさせるモノでした。
№77
長い服、手に鏡(鏡はオルフェイス教の儀式における奉納品の一つで再生の象徴であった@解説)、3つの頭を持つ蛇を手にしているのが印象的でした。
この人物はオルフェイスその人かもしれないです。
№83
「太陽を象徴する狼と、右手でフィアラ杯を献酒するように手を高く持ち上げている。
これは死者が神と一つになる秘密の儀式の象徴かも@解説」
馬を乗りこなし、勇猛果敢な兵士だったトラキア人たちは、死を怖れなかったそうです。
それは死の世界こそ、ユートピアだと信じていたからです。
馬具につけられた装飾は、その世界へ導いてもらうための願いがこめられているように思いました。
特に「杯と秘儀」はオルフェウス教にとって大切な意味を持つので、この小さな金具もなかなか味のある遺物だと思います。
■Ⅱ.墳墓に眠る謎
あの世でも現世と同じような生活ができるように、お墓には日用品を納めたのですが、どれも美しく、可憐で、見ていて飽きませんでした。
トラキア人と今のブルガリア人が同じかどうかは分かりませんが、割と大柄でゆったりした男たちが、こういった繊細で可愛らしい装飾品を作る姿というのは想像できないのですが、イスラム芸術などもそうですが、小さくて愛らしいモノを愛でる気質を大柄な男性が秘めていると思うと、萌えてくるモノがあります。
オススメは№101の小さい水差し。持ち手が組みひもになっているのが素晴らしいです。
№126のカンタロス杯について
ディオニュソスの図が描かれているということで、じっくり拝見したのですが、解説と杯の絵が違うことに気が付きました。
解説では「杖を持ったディオニュソスが鹿を持った女性信者に向かい合っている」と書いてあるのですが、確かにディオニュソスは杖を持っているんですが、頭がハゲていて、あきらかにオッサン…。
ディオニュソスといえば美青年の代名詞になるほどなのに、おかしいな~と思いました。
それに向かい合っている女性は手に鹿ももってないし。
不思議に思って杯の裏側をみると、そこには顔の綺麗なお兄さんが立ってました。
明らかに展示のミスだと思って、スタッフに声をかけました。
「あの…あのツボですが、展示が前後逆になってますよ…」
アンケートにもその事を書いてくれと言われたので、書いておきましたが、ちゃんと展示を直してもらえたかな…。
ガラスケースを持ち上げて、展示を直すって大変そうなので、会期終了まで間違えたまま展示してしまう可能性もあるので、ちょっと心配しています。
■「トラキア王の黄金のマスク」と「黄金の花冠」
このコーナーに目玉のマスクが展示してありました。
大きなガラスケースに入った黄金がまぶしかったです!
特別な装置でコーナーをバラの香りで満たしているため、なんとも優雅な気分で展示を堪能できました。
このコーナーでちょっとショックなニュース板を見ました。
ブルガリア考古学の第一人者、ゲオルギ・キトフ博士の訃報です。
2008年9月14日にお亡くなりになったそうです。
博士といえば古墳をブルトーザーで削って発掘するとか、世界ふしぎ発見に出演していただいたことなど、会った事もないのですが身近に感じていた博士なので、この訃報は辛かったです。
■Ⅲ.黄金の秘宝
パナギュリシュテで発掘された品々が全部来てました!
「黄金のフィアラ杯」またの名を「黄金の巨大月餅」は黒人の顔が刻まれているという不思議な一品でした。
よく見ると「ドングリ」も刻まれています。
トラキア人はドングリも好きだったらしいです。
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■おみやげ
図録は2000円!
ずっしりと重たいので手に食い込むほどでしたが、古代ブルガリアを知るには最良の一冊です。
クリアファイルや文鎮、クッキーなど、相変わらずの品揃えですが、やはりブルガリアと言えば「バラ」なので、バラ関連のグッズを多く売っていました。
先着2000名に配られたローズ製油を染みこませた紙をもらったのですが、これを嗅いでいるとバラの香水が欲しくなります。