メソポタミア文明展
観覧のキモ=秩序と雄々しさ! ヒゲの文化は伊達じゃない!
ルーブル美術館に所蔵されていた品々、特に「文外不出」といわれる「ハンムラビ法典」が日本に来るというので、結構混んでいました。
メソポタミア系の展示会というのは案外少ないので、多量に見ることが出来るこの企画はまったくありがたいモノです。
シュメール文化の中心地として世界的に有名な「マリ遺跡」を訪問した私はその荒涼ぶりに唖然とし、「話が違うではないか!!」と吼えたことがあるので、今回は華麗なるマリ遺跡の出土品を期待していました。
なお、今回は入り口で「展示目録」が置かれてなかったのが非常に残念。
上野にはあるのに世田谷では配らないなんてちょっとひどいですよね。料金いっしょなのに…。
■概要
最初に足を踏み入れるホールには四つの巨大なパネルに主要なメソポタミア遺跡の写真が並んでいました。
1.ウル第3王朝(2100BC)のジグラット
2.前14C半ば以降、アッシリアの都市が置かれていたアッシュールとチグリス川
3.アッシリアの王センナケリブ(704~681BC)が首都として建設したニネベの門(背後の岩山がそそる)
4.6BCに繁栄していたバビロン遺跡
パネルの下にはそこから出土した遺物が展示されています。
★音声ガイド3「山羊を描いた杯」
ペルーの「チャンカイ遺跡」出土の土器と色合いなんか似てますよね。
一見すると「だまし絵」みたいですが、犬と大きな角を持つ山羊が描かれています。
その山羊を囲む直線の枠がまたピリッと聞いていてこれが5000BCの感性かと驚きましたね。
これは初期ウバイド朝(5000BC)のもので出土は「スーサのアクロポリス」となっています。
(スーサは現在イラン国の南部にあたります)
●閃緑岩の「軸受け」
一抱えもある大きな石なのにさりげない存在感。
軸受けとは扉の軸を支える土台のところ。よく使い込まれていてピカピカです。
第3章 アッカド帝国
ここでは前2350にアッカド帝国に君臨したサルゴン王の時代の遺物を展示しています。
ここでお待ちかね!
生ハンムラビ法典!
感想:
思ったよりも大きく、堂々としている姿も良し! 玄武岩の存在感も素晴らしい!
巨大な円筒石にびっしりとくさび型文字が掘り込まれているのですが、近づいてよくみると、その刻線の細いこと!
神から権力と支配を象徴する杖と輪を渡されるハンムラビ王。
法によって国を治めるという世界最古の法典を作った王にしては、謙虚な姿がそこにはありました!
法典が展示してあるコーナーには3台のモニターが置かれ、「ハンムラビ法典の発見」「法典の意味」「楔形文字」について解説ビデオを流していました。
モニターが入り口近くにあるので、そこだけ混み合い、落ち着いて鑑賞できなかったのが残念。
法典の歴史:
バビロニアにあったこの法典はエラム人が戦利品として持ち帰り、やがてエラム人の滅亡とともに忘れ去られ、
1792年にフランス発掘隊よってスーサ(もとエラム人の都市)から発見された。
第4章 ラガシュ国のグデア…シュメールの復興
グデア王(2125~2110BC)
ラガシュ国のグアデ王はバビロニアに影響を受けた芸術を捨て、シュメール・ルネサンスを起こし、
新しい時代を築いていきました。
展示物にはグデア王の名が刻まれているものが多い。
その中でも当の「グデア王」自身の像は王の石「閃緑岩」で作成されています。
やさしげな王の表情とは別に二の腕の逞しさがこの王の本質をあらわしているような気がしました。
第5章 バビロンのハンムラビと人々の暮らし
★音声ガイド12「生け贄の執行人」
マリの宮殿から出土したこの壁画。
「う~ん、こんなものがあったのか」と、あの発掘現場を思い出し、しみじみ…。
第6章 アッシリア
この時代くらいが私たちがイメージする壮麗なメソポタミア文明と合致するんじゃないでしょうか。
★音声ガイド23 「歩行するライオン(行列通路のレンガ装飾)580BC」
何度も本で見てきたあの「ライオン」が自分の前に……。ちょっとジーンと来ましたね。
背景の青はイスラム圏で割と目にする青の釉薬で染められています。
ライオンの身体に使った黄色も深みがあって美しかったです。
当時は威厳のあるライオン画が左右の壁にずら~っと60頭も並んでいたそうですが、
ため息でるほど美しかったと思います。
ここのピカイチ
とんがりカブトをかぶった2人の兵士を描いた低浮彫り(ニネヴェ出土・645~640)
表情が渋い!勇敢な兵士の一瞬を切り取ったような表情がいい!意思の強さを感じさせる鼻の存在感も○。
第7章 ペルシャ帝国治下のメソポタミアとアレクサンドロス大王征服以降
★「ペルシャの射手」 スーサのダレイオスⅠ世の宮殿アパダナ(謁見の間)522~486BC)
ここでの目玉はなんといっても装飾レンガ!
ひげヅラの兵士が身にまとう服には、かわいらしいお星さまが!
★「王の頭部(530~520)」
キプロスのマルラで出土したなんの変哲もない石像頭部です。
「アッシリア年代記」の解説によると、
「キプロスはアッシリアに征服され、ペルシャに征服されるまでアッシリアに貢物を送っていた」
あんな小さな島なのに王が君臨していたのかと、ちょっと驚き。
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おみやげコーナー
ルーブル美術館で売っているものも混じっていましたが、まあ品揃えとしては70点くらいをあげたい。
写真のクリアーファイルは他にもあったのですが、今回の目玉はハンムラビ法典なので、その絵柄を購入するポイントにしました。
右手は「ハンムラビ法典・ペンケース」です。ちょこっと小さいのが良し悪し。
マウスパッドもありましたが、「メディア朝貢使の頭部」とか題材のポイントがずれているものもありました。
絵はがきもパッとせず、ちょっと残念。